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クスリの時刻で副作用減らせる
投薬の時刻を変えることで、副作用を軽くしたり、効果を上げたりすることをめざす「時間治療」(クロノセラピー)に、医師が注目し始めた。患者それぞれの症状に合わせたオーダーメード医療の一種だ。製薬会社も、新薬開発のヒントとして基礎研究を進めるが、一方で、既存薬の売り上げ減に結びつきかねないという不安も抱いている。(川口恭)

 九州大学病院(福岡市東区)の第三内科病棟では、肝炎患者への1日1回の抗ウイルス薬・インターフェロンの注射を、午後6時からの夕食後に打っている。担当の中牟田誠医師が02年1月、それまで日中だった注射時刻を夕方に変更して以来の光景だ。

 インターフェロンは、投薬を始めてしばらくすると、不眠や鬱(うつ)などが出る場合がある。こうした副作用を減らすのが「夕方注射」の狙いだ。

 よりどころは、同じ九大の大戸(おおど)茂弘・薬学研究院助教授が01年3月に発浮オ、02年度の日本薬学会学術振興賞を受けた研究内容だ。

 大戸氏は、夜になれば眠くなり、朝になれば目が覚めるといった自然な体内リズムに注目。インターフェロンを朝方投与すると、そのリズムが狂い、夕方投与だと影響が少ないことを突き止めた。

 マウス実験によって、体内リズムを生み出す時計遺伝子(メモ参照)の働きの変化を実証。人間の時計遺伝子へのインターフェロンの悪影響も、投薬時刻の変更で軽減できるはず、と論じた。

 患者は、九大病院退院後も半年は注射を続ける。その際、近くの開業医に行く時間帯を、夕方にする場合が多い。福岡市在住の男性会社員(55)は「始めは会社の昼休みに打ってもらいに行ったが、体がしんどかった。夕方の通院・注射にして以降、楽になった感じだ」と話す。

 薬効向上につながる、との研究もある。

 自治医科大の藤村昭夫教授(臨床薬理学)グループは、人工透析を受けている人が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になるのを防ぐために服薬するビタミンD3について、栃木県内の臨床現場で調べた。

 この薬には血中のカルシウム濃度を上げすぎて、吐き気や脱力感などを招く副作用もある。朝夕の服薬の影響を比較したところ、夕方の方が、血中カルシウム濃度が低い状態が続き、副作用が少なかった(グラフ下A)。同時に、骨密度の増加量も大きく、骨粗鬆症防止の効果も朝方服薬を上回った(同B)。

 九大、自治医大の事例は、「時間治療」最前線の動きだが、医学界で評価が定まっているものではない。治療法として確立しているのは、1日の症状の強弱に一定のリズムがある高血圧、ぜんそく、糖尿病などへの投薬法だ。

 東京女子医大第二病院(東京都荒川区)の大塚邦明教授は3年前から、高血圧患者に対し、1日24時間・1週間連続で血圧測定している。各人で違う血圧変化のリズムを見極め、高い時に薬の濃度が高くなるよう、朝高い人には朝だけ、夜高い人には朝夕に分けて服薬してもらう。

 2年間、この投薬法を続ける東京都の食堂経営の女性(66)は「前の病院では『あなたに効く薬はない』と言われたが、夕方の服薬を始めたら血圧が下がった」と話す。


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